共謀罪に反対する緊急声明

2006 年 4 月 26 日

社団法人自由人権協会大阪・兵庫支部
代表理事 菅充行

衆議院法務委員会は4月21日から,いわゆる「共謀罪」の新設を含む「犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案」(以下,「本法案」という)の審議に入り,与党の修正案が提案されました。与党は今国会での成立を期そうとしていると報道されています。

共謀罪は,「国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約」(以下,「国連条約」という)が取締りを求める組織犯罪対策を名目としていますが,実際には,薬物犯罪などの組織犯罪に限定することなく広く600以上の犯罪について,合意のみで処罰するもので,その対象も市民団体や労働団体なども含むことから,市民の自由や人権を侵害するおそれが非常に大きな危険なものです。

また,報じられている修正案では,第一に,適用対象の団体を「その共同の目的が罪を実行することにある団体である場合に限る」とする,第二に,「犯罪の実行のために資する行為」を要件として加えるとされています。

しかしながら,第一の点については,ここにいう「団体」は,恒常的な組織のみを意味するわけでなく,一時的に形成された複数人の集まりをも含むと解される余地があります。従って,例えば正当な目的を有する市民団体においても,共謀があったとされる時点で,新たにここにいう「団体」が形成されたとして共謀罪が適用されることになりますから,国連条約が取締りを求めるマフィアなど組織的な犯罪集団に限定されません。

また,第二の点については,「犯罪の実行のために資する行為」は,犯罪の準備行為よりはるかに広い概念であり,何ら,共謀罪の成立範囲を限定したことにはなりません。

このように,修正案も,共謀罪の成立範囲を限定したものとは到底言えません。

また,共謀罪が導入されると,犯罪捜査においても,広範囲の盗聴やメールの傍受などが必要になり,警察が市民生活の隅々まで入り込む監視社会をもたらす危険があります。さらに,自首による刑の減免が規定されることから密告などの風潮も強まりかねません。

このように,本法案は,このように修正しても,思想信条の自由,表現の自由など重要な自由と基本的人権を侵害し,監視社会を招くものであり,自由人権協会大阪・兵庫支部は,強く反対します。

以上