追憶のPatterson’s House

 かつて東京の実家に住んでいた時、自転車で10分ほど行った隣町の駅の近くにPatterson's Houseはあった。Patterson's Houseのご主人は太宰さんという方で、丸紅山口から出ていた市販高級ランドナーとして有名なベニックスを開発した方であった。Patterson's Houseは、その頃(もう今から27〜28年前の話である)は日曜日のみ店を開けていたが、私は日曜日ごとにPatterson's Houseに入り浸っていたものであった。そういえばかのReneHerseが亡くなったというニュースを聞いたのもPatterson's Houseでであった。
 そのように入り浸っていたので、Patterson's Houseの自転車から受けた影響は大きく、高校を卒業する頃に「じゃあ一台作るか」と太宰さんに言われた時はものすごくうれしかったものである。
 その後大学に入り、東京をしばらく離れていたが、その間にPatterson's Houseはどこかに移転してしまって無くなってしまった。空き家となった店はしばらくはもぬけの殻で残っていたが、今では小さなビルディングが建っていて、かつての面影は全くない。
 近年インターネットで検索したら、太宰さんは埼玉県の川口の方でPatterson's Houseブランドの自転車を作っているということがわかったが、私自身が石川県に引っ越してしまったためにまだ訪ねるには至っていない。
 下の写真は、ある時Patterson's Houseを訪れたら、いつもは店内にしまってあった太宰さんの自転車が外に出されていたので、慌ててカメラを取りに帰り、写真を撮ったものである。もっと撮ったような気がするのだが、そのネガは今のところ発見するに至っていない。

タンデム旅行車ステム部分
GBのステムを使用している。何でこの写真を撮ったのか不明。後のショーウィンドウに飾られている自転車は、ベニックスのロードレーサー「アドホック」。黄色く塗装されたラグレスフレームが特徴であった。

650×35Bランドナーステム部
650×35Bのチューブラータイヤをはかせたランドナーのステム部。クロモリの特製ステム。ベルにも肉抜きの穴が明けられている。このベルの打ち子はブレーキワイヤーのタイコ部が使われている。

650×35Bランドナーチェーンホイール部
 TAの3アームのクランクにトリプルのチェーンリング。フロントディレイラーはサンプレックスのスライド式。チェーンガイドに肉抜き加工が施されている。ペダルはリオター(昔はレオタードと呼んでいたが、これはフランス語的発音でなかったのか?)のプラットホーム。

650×35Bランドナーリアメカ部
 リアディレイラーはサンプレックス。機種名まではわからない。エンドに肉抜き加工が施され、中空シャフトにメスねじを切って、小さなボルトでホイールが止められている。確かに使いようによってはクイックレリーズを使用する必要はないので、その分軽量化が図れて良いのかも。

650×35Bランドナーテールランプ部
 JOSのプラスティック製のテールランプがついている。アルミ合金と組み合わせのJOSのテールランプはそれなりにポピュラーであるが、このテールランプはあまり見たことがない。

650×35Bランドナーヘッドライト部
 マビックのマッドガードにJOSのヘッドランプ。小型のキャリアには単二乾電池を使用する懐中電灯がラジエーターホースバンドを利用して装着されている。

650×38Bランドナーチェーンホイール部
 ストロングライト49Dのクランクセットにサンプレックスのチェーンリング。フロントディレイラーはサンプレックスのスライド式のガイド部を加工したもの。このシルエットは格好良く、かつては自分の自転車のフロントディレイラーも同じように加工したものである。

650×38Bランドナーフロントキャリア部
 基本的にはごくごくオーソドックスな構成。
 タイヤサイズが正確に38Bかどうかは記憶に確かではないが、42Bほどには太くなかったような気がする。マッドガードの先端にはソービッツ(スービッテ?)のヘッドランプが装着されている。

650×38Bランドナーフロントハブ部
 マキシカーのハブだと思う。クイックッレリーズではなく、袋ナットで止められている。マッドガードのUステーはスチールパイプにメッキをした物が使われている。

650×38Bランドナーフロントメカ部
 チェーンステーにチェーンガードが直付けされている。フロントディレイラーのチェーンガイドの内側もスムーズになるように加工されている。

650×38Bランドナーリアブリッジ部
 マッドガードはブリッジに隠し止めでは止められていない。上下方向に貫通しているボルトとブリッジから出ている前後方向のボルトとで止められている。これはマッドガード分割の為であり、マッドガードの耳の部分にスポークが差し込まれていて、分割部がスムーズにつながっている。

650×35BランドナーWレバー部
 特徴的なリアブレーキワイヤー内蔵のためのトップチューブのふたが見える。
 ダウンチューブに直付けされたWレバーにも肉抜きが施されている。ラグはナベックスで、ここにも肉抜きがされている。


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