この自転車を作った経緯

　この自転車は高校3年の冬に受験勉強そっちのけでオーダーした物である。それまでもパターソンズハウスには入り浸っていたのだが、若輩者がオーダーしてください等とはとても言い出すことが出来なかったのである。それがある日、パターソンズハウスの太宰さんが「そろそろ一台作るか。」と言ったので、やった！ということで作ったのがこのランドナーである。
　フレームサイズは太宰さんに総て決めてもらった。フレームサイズ580mm（C-T)と聞いたときは「大き過ぎるのでは？」と思ったが、そうでもなかった。でも、シートピラーの出方が若干少ないので、もう20mmくらい小さくても良かったのかもしれない。大体、シートチューブのサイズはシートピラーの出し方を変えれば調整可能なわけで、トップチューブの長さとかをじっくり決めておけば、シートチューブの方は多少違っていてもあまり問題はないのかもしれない。
　フレームの材質はクロモリとレイノルズ５３１の組み合わせと聞いているが、どこにどのチューブを使っているのかは知らない。フレーム単体での重量を量ったことはないので、このフレームが重いか軽いかはよくわからないが、完成車としての重量は比較的軽めなのでそれなりのチューブが使ってあるのであろう。
　ラグはナベックスを選んだが、「また古くさいのにしたな。」とその時言われた。確かにその当時でもナベックスは既に作っていなかったのではないか？　ＢＢ部はナベックスではない。
　シートステーはパターソンズハウスオリジナル形式の集合ステーである。ランドナーにして集合ステー。あまり見あたらない形式である。
　パーツで特徴的なのは、当初着いていたホイールである。幅20mmくらいのパターソンズハウスオリジナルリムをデュラエースのＳＦＱＲで28本のスポークで組んだ物である。しかし、このリムは軽すぎたのかいつしか振れが取れなくなってきてしまった。そこで、スポークをはずしてリムだけにしてみたところ、既に三次元的に曲がってしまっていたので、やむを得ず使用をあきらめた。現在はスズエのＬＦＱＲにＡＲＡＹＡのリムで組んであるが、26×1・3/8のリムを探すこと自体が既に困難になっていた。オーバーロックナット寸法120mmのハブなんて何処を見回してもない、という感じであったので、もとは126mmのハブのシャフトを切って対応した。
　TAスリーアームはパターソンズハウスの自転車としてはスタンダード的な選択である。キャリア、マッドガードはパターソンズハウスオリジナル。マッドガードのＵステーもクロモリの中空パイプになっていて、重量はアルミ製のＵステーと一緒だが強度は数倍という物である。ついでにステーを止めるだるまネジもフレームのダボを掘って、だるまネジのカラーを省略してある。
　ディレイラーは当初はシマノクレーンを装着していたが、サンプレックスのスーパーＬＪを経て現在はカンパニョロのヌーボレコードが着いている。変速性能がどうのこうのと言うよりもパーツとしての見栄えを重視した結果という感じであるが、まぁ当時はレース用に使用されていたディレイラーなんだから変速性能も良かったのであろう。フリクション式であるので、当然ながらピシッと狙ったギアに入れるためには勘を必要とさせられる。リアスプロケットもたったの5枚しかない。当時はそれが普通であったが、今の9段や10段と比較するといかにも少ないような気がしてしまう。

　今回、写真を撮るついでに実に久々にこの自転車に乗ってみた。といってもサンダル履きのいいかげんな格好であるが。が、それでもこの自転車は際だって乗りやすかった。こんなに乗り易かったっけ？と今更ながら疑問に思うほどであった。最近はロードレーサーにばっかり乗っていたので、ことさらに乗り易く感じるのかもしれないが、そのちょっと前にロードレーサーに乗ったときには非常に軽快でどんどん走りに行きたくなる感じを受けていたので、ロードレーサーが乗りにくいわけではなく純粋にランドナーが乗りやすいのであろう。
　これでブレーキさえちゃんと効くように出来たならば、またこの車で旅に出たいと思うのであった。