2005年8月26日 直江津港 → 室蘭 → 洞爺湖温泉

 目が覚めると揺れている。それもかなり揺れている雰囲気。やっぱり台風は来ていたのね、と言う感じである。
 窓の外の遙か彼方に陸地が見える。あれはどこだろうか? 佐渡かな? などと思う。海は白波がたっている。寝ながら揺られていると船酔いが心配になってきた。こんなに揺れていると、みんな船酔いになってしまって、トイレがゲロだらけなんではないかと思うといても立ってもいられない。とりあえずトイレに行くべく起きる。意外にもトイレは全くきれいであった。
 トイレの心配が去ると、ここはどこかと言う事を知りたくなってきた。ハンディGPSを持って外甲板に行こうと思うが、ドアが風圧で開かない。仕方なく、窓にくっついて衛星を捕捉する。どうやら見えている陸地は男鹿半島の様だ。もう秋田まで来たんだ!とえらく感心する。これが走っていたら大変だ。
 しかし、そこからが結構長かった。本州って秋田から北にそんなに距離があったっけ?と思うほど時間がかかる。朝、男鹿半島沖を通過したのに、津軽海峡通過はお昼頃である。室蘭に入港するのは午後5時近く。それまでの船足に比べて遅くなっているんじゃないの、と言う感じであるが、GPSで測定してみるとコンスタントに45km/h位は出ている。
 しょうがないので、メシを食ったり北海道でのルートを検討したり、風呂に入ったりして過ごす。東日本海フェリーの食堂のメシはそこそこ安い。吉野家並みとは言わないが、朝食ならそれなりの内容で800円位。昼飯もステーキ(どんな肉なんだかはわからないが)定食とかで1300円くらいだったような気がする。きっと仕事で乗るトラックドライバーが多いから、飲み物をはじめとして比較的安い料金設定になっているのであろう。
 風呂は大変だった。波で揺れているから当然風呂のお湯だって揺れる。洗い場で体を洗っていると風呂が波立って、ざっぱーんと自分にかかってくる。おかげさまで体を洗い流す手間が省けた。ただし、それが水風呂の水でなければもっと良かったのだが。
 そうこうしているうちに、ようやくフェリーは室蘭港に入港した。外は雨が降っている。手早く荷物をまとめてバイクの置いてある第一甲板へと降りる。バイク固定用のストラップをはずし、荷物をバイクに付ける。ちょっと待っていると、ほどなくして下船となった。
 雨の室蘭港に北海道上陸の第一歩を印す。風も強い。雨は降ってはいるが、まぁそれほど強いわけでもないのでカッパも着ずにそのまま行く事とする。今日は洞爺湖温泉に宿が取ってある。
 今ひとつどっちに行っていいのだかわからないまま走り出す。なんとなく閑散とした市街地の様なところを走り抜け、白鳥大橋を目指す。
 白鳥大橋にさしかかるとめちゃくちゃ風が強い。右から左へと吹き抜ける風なので、センターライン寄りに傾きながら走る。ここから落ちたらと思うとおっかない。ようやく白鳥大橋を渡り終えると、今度は伊達市に向かって国道37号線を北上する。何となく路肩が本州の道よりも広い様な気もするが、別にこれが北海道の道!という感じではない。
 伊達市に入ってガソリンを入れる。ついでにタイヤの空気圧も見る。どうも昨日の高速道路走行でタイヤの温度がやたらと上がっていて、トレッドゴムもレーシングタイヤの如く融けているなあ、と思っていたのだが、案の定規定の2.5kgf/cm2に対して1.5kgf/cm2しかエアが入っていなかった。
 エアの補充も行って走り出すと、まもなく昭和新山方面への分岐となる。途端に交通量の途絶えた道を昭和新山方面へ向かう。畑と山の中を寂しげな高速道路が高架で突っ切っている。
 やがて昭和新山。山の前に広いアスファルトの広場と土産物屋が並んでいるが、夕方という事もあるのかほとんど誰もいない。空は今にも雨が降り出しそうに暗いし、誰もいないしで寂しい事この上ない。写真を一枚撮って出発。バイクから降りもしなかった。
 洞爺湖畔に出てから洞爺湖温泉に向かう。途中、止んでいた雨が再び降り出してきた。セイコーマートに寄って、今晩の食料を調達する。今晩は民宿泊まりなのだが、夕食は頼んでいないのでどこかで食べようかと思っていたのだが、あまりの寂しさに食料を調達できるところで調達しておかないと、メシを食いっぱぐれるのではないかと心配になってきたのであった。
 食料も調達して民宿へと向かうが、これがその場所が全然わからない。大体場所を良く確認してこないのがいけないのだが、洞爺湖温泉街の中を何周もぐるぐる回っても見つからない。近所の酒屋さんで聞いてみたりしたが、そんな民宿は知らないと言う。最後に同業の民宿に聞いてみたら、ようやく場所が判明した。ちょっと離れた場所であるとの事。道順を聞いて、そちらに向かう。
 ところが、言われたところに行っても住宅街があるばかりで、民宿らしきところがない。再びぐるぐる回ってしまったが、「これじゃないの?」という家を覗いてみたところ、アタリであった。
 その民宿は、ごく普通の洋風建築の立派な家を宿屋として部屋を貸していて、一見すると大きな普通の家にしか見えないので、わからなかったのであった。でも、ずぶ濡れの我々を温かく迎えてくださり、ありがたかった。
 その後は、食堂で買ってきた食料で簡単な夕食とし、明日に備えてさっさと寝るのであった。そう言えば、その家の窓からは洞爺湖の花火がよく見えた。
【走行距離 53.9km】






男鹿半島を遙かに望む。
海には白波がちらほらと見え、船は結構揺れる。





「れいんぼうべる」の船首。ずーっと向こうの方に北海道が見えている。




津軽海峡通過中。速度44km/hほど。




昭和新山


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